こんにちは、ぷんおです。
ウォン・カーワイ監督の『天使の涙(堕落天使)』 4Kレストア版、観てきました。
観客は、その作品を初めて観た時の記憶が強烈に残っているもの。今回のレストアは、単なる焼き直しではなく、新たに生まれ変わった作品と位置付けることにしました。この新しい作品を楽しんでもらいたいと思っています。
ウォン・カーワイ
(公式HPより 『WKW4K ウォン・カーウァイ4K 5作品』オフィシャルサイト)
・・・ということで、思い出とともに感想をまとめていきます。
劇場鑑賞ならではの醍醐味
雑多な街で何ミリ何秒ですれ違い出会い生きる人々。
迷路のように入り組んだ街。ビルの谷間から見上げる狭い空。無法地帯で無国籍。
クリアになった映像と劇場鑑賞ならではの迫力。自分も香港の街を疾走しているような気分になりました。
が、その街は25年前の過去の今は亡き光景。
70〜80年代の頃の香港の記憶
私が子供の頃、香港映画は身近でした。
燃えよドラゴン、Mr.Boo!、少林寺、ジャッキー・チェン、サ・ハン・キンポー、、、
ひと昔前、韓流ドラマの再放送がすごい時代がありましたが、更にそのひと昔前は、これらの香港映画シリーズが頻繁に放送されていた記憶です。
ここで問題になってくるのが、香港の認識、いや、全ての認識。
ジャッキー・チェン、テレサ・テン、チョー・ヨンピル、アグネス・チャン、アグネス・ラム、欧陽菲菲、ジュディ・オング、、、高見山!
中国なのか?香港なのか?台湾なのか?韓国なのか?ハワイなのか?
中学生になり、歴史の授業で学んだものの、結局区別も意味もわからぬうちに歳を取りましたが、映像から醸し出す異なる具現化しがたい雰囲気から香港が中国ではないことは感じていました。
90年代〜現代の頃の香港の記憶
ジャッキー・チェンがハリウッドに進出。
ミニシアターブームの波に乗って、スタイリッシュな香港映画に触れる機会が増えました。同時期に台湾映画やベトナム映画も観た記憶です。
香港アプローチのことやマッチ箱を積み重ねたような九龍の話を聞いて、いつかは行ってみたいと思っているうちに香港変返還。カイタック空港も九龍も取り壊され、香港映画は激減し、香港の象徴であったジャッキー・チェンが中国共産党寄りの人となり、気づけば香港の自由は失われていました。
民主化デモが起こってから今年で8年が経過。
これが1990年代後半から現在までの香港の記憶と事実です。
皮肉なことに国家間の関係の悪化で、子供の頃区別のつかなかった国やスターの名前の区別がつくようになりました。
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2022年の私に届いたモウのビデオ
今回の劇場鑑賞で一番響いたシーンを書きます。
モウ(金城武)は、バイト先の居酒屋の店主斉藤さん(元映画監督)が子供への誕生祝いをビデオテープに込め自撮り撮影をしていることに憧れます。モウは自身のお父さんを追い回し撮影を開始。結局そのテープは60歳の誕生日、お父さんを楽しませるプレゼントとなり、父亡き後、在りし日の記憶を自身に刻みつけるものとなります。
当時、モウの父さんのことを深く考えなかったのですが、このシーンが一番胸に刺さりました。
モウの父さんの年齢を考えると、日本占領時期に生まれイギリス植民地に戻り香港返還を待たずして亡くなったということ。もちろん中国の文化大革命も天安門事件も体感しているという設定なんですよね。
歴史の変わり目を目の前にそれをおさめたモウ。
こうして25年後、香港の人々が自分のようにパイナップルを食べすぎたように口がきけなくなる日がくると思っていたでしょうか?
◇◇◇
このビデオのBGMとして使われたのが『思慕的人』
台湾の歌です。劇中歌唱は齊秦ですが、作曲元歌は洪一峰。
下記動画リンク『TTV 台視官方頻道 TTV Official Channel』で両者の歌唱が見れます。(6:03 洪一峰 7:04 齊秦)
齊秦演唱思慕的人 洪一峰老師透露 歌曲背後的故事【龍兄虎弟】精華 - YouTube
※歌詞和訳、Google翻訳に一部手を加えただけのものです。参考程度に。
『思慕的人』
作詞:葉俊麟
作曲:洪一峰
心に慕う人 私のそばをどうやって去るの?
あなたのために私に電話してください
最愛の人、戻ってきて、私に戻ってきて
憧れを抱く者がいて、私の夢の中では切っても切れない関係にある
もっと失恋したあなたと向き合うように導いて、私の人生を生きて
最愛の人、戻ってきて、私に戻ってきて
憧れの人のように、美しい歌声が私の耳をかき乱す
優しくて優しい君を想うと僕は君を呼ぶ
最愛の人、戻ってきて、私に戻ってきて
ぷんおの感想&まとめ
地元の公開初日。劇場は私と同じ世代の女子でいっぱいでした。
みんなこの作品を数え切れないくらい観て同じように歳を重ねここに集ったと感慨深く思うと同時に、返還から25年間徐々に香港から自由が失われて行く歴史を観てきたんだなと思うと複雑な思いになりました。
若い世代の人へ。撮れなくなる&出演が激減し今に至る事実にも是非目を向けて。
◇◇◇
新しい世代、タイのバズ・プーンピリヤ監督とタッグを組んだ作品、まだ観てないのですが、近いうちに観に行きたいと思います。
果敢にチャレンジを続けるウォン・カーウァイ監督が大好きです。
作品情報
公開:1995年
原題:『堕落天使』
監督:ウォン・カーウァイ
製作:ジェフ・ラウ
脚本:ウォン・カーウァイ
撮影:クリストファー・ドイル
美術:ウィリアム・チャン
音楽:フランキー・チェン、ロエル・A・ガルシア
【キャスト】
殺し屋:レオン・ライ
エージェント:ミシェル・リー
モウ:金城武
失恋娘:チャーリー・ヤン
金髪アレン:カレン・モク
香港の地図