日感アルダ

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ヒョンビン出演「アイルランド」〜結局なにがいいたいワケ?【考察】

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どうも。ぷんおです。

ヒョンビンブームの流れで興味をお持ちの人が多いはずの作品「アイルランド」。

結構モヤっとする作品だと思いますが、ご覧になったみなさんはどのような感想でしたか?

私はですね、見終えた後に「で?」となりました。

今回は作品の概要・あらすじ等を含め、

なぜこの作品が意味不明なのか?

について迫りたいと思います。

 

 


基本情報

放送:2004年9月1日〜10月21日(MBC)全16話
原題:「아일랜드」
監督:「威風堂々な彼女」「エデンの東」のキム・ジンマン
脚本:イン・ジョンオク
視聴率:同脚本家の前作「勝手にしやがれ」のカルトファンの支持を受けネットの掲示板で盛り上がりを見せたが、お茶の間の評判は(視聴率)はさほどでもなし。


視聴するには?

Amazonプライビデオの中にあるチャンネル「韓国ドラマ・エンタメ Channel K 」(¥550/月額)の見放題に入っているようです。(2021/08/22現在)
ちなみに「Channel K」はアマゾンプライム会員(年間プラン4,900円(税込)or月間プラン500円(税込)に加入が条件となるようです。
私はアマゾンプライム会員なのでこの作品をChannel Kで視聴したのですが、全体的に作品数が少ないので1ヶ月のお試し期間終了後即解約しました。


登場人物とキャラ

●イ・ジュンアイ・ナヨン
3歳の時、親の貧困で韓国から海外に養子に出され米国系アイルランド人として幸せに育ち将来は医師を目指すインターンIRA組織の一員だった兄と楽しく過ごしていたところ、敵対組織に囲まれ自分を除く家族が銃殺。アジア人のジュンアは家族と見なされず見逃されたが、家族を見殺しに自分だけが助かった罪悪感とアイルランド人なのにそうではないという現実にアイデンティティーが崩壊し精神を病む。
兄と一緒に行くはずだった韓国に着き漢江で自殺を試みるも失敗。行きの飛行機の中で出会ったボディーガードのグクと結婚。
ある日ジェボクと再会。病院の待合室で失神中の彼の姿を見てアイルランドで家族を失った時の恐怖、、、1年前バスに轢かれそうになったジェボクの姿、、、フラッシュバックが起こり本能的に救命措置。それからジュンアは変わっていく。今までのグクの献身的な愛で守られる生活を脱し医師の仕事を再開。自立を試みる。
クリニックでの仕事を通じ、院長から患者の命との向き合いをこっぴどく叱られ、そこから医師としての自覚に目覚めるとともに自分や他者の命(生き方含む)について関心を持つようになる。最初は難色をあらわしていた実母(かもしれない)との再会や韓国独特の密な人間関係を受け入れるようになる。
ジェボクの存在は偉大だった。
ジェボクもグクも自分を愛してくれるが、ジェボクはダメな自分のありのままを尊敬してくれ愛し許し開放してくれる。(※グクはジュンアのダメなところを可哀想と哀れみ守る)
アイルランドで流す涙さえ枯れてしまったであろうジュンア。クライマックスにかけては他人のために本当に泣くことが増えていく。
そしてラストはグクの子を身ごもるが離婚を決める。それはジェボクへの元へ行くためというよりはひとりの人間としてもっと自立したいという思いからだったように伺える。

●イ・ジェボクキム・ミンジュン
30歳を過ぎているのに定職ナシ。再婚した母と母の再婚相手の義父を「ジジイ」と罵りながら悠々と暮らしている。口だけは達者。ある意味吟遊詩人、最近でいうところの「ポエマー・ナムジャ(ポエム男)」
運命が動き出したのはある日の横断歩道(市庁前?)。AV女優のシヨンと生活がはじまろうとしていた時、偶然にもジュンアとグクがそこにいた。危うくバスに轢かれそうになった自分を引っ張り助けてくれたジュンア。瞬時の出会いではあったが、1年後も彼女のことを記憶していた。
シヨンの家で彼女の家族たち(シヨンの収入頼りで何もしない)と生活する日々だったが、ジュンアと再会したことで変化が訪れていく。
ジュンアには大きな愛情と尊敬を抱き、恋敵の夫グクを尊敬の念と憧れの念で見つめ、その気持ちを嫉妬も含め子供のように素直に彼にぶつける。
今までフラフラと生きてきたが、グクの警護会社の仕事に携わることで誰かやなにかを守るということが自分の想像以上に容易ではないことを思い知らされ、最初はナメた態度であったが真剣に仕事に取り組むようになる。
ラストでは片足が不自由になり姿を消すが、足を引きずりながらもガソリンスタンドで自活。後に人知れず田舎の病院で元気にバイクで送迎の仕事をしながら足を痛めたことで興味をもった整形医学の勉強に熱中。

●ハン・シヨン(キム・ミンジョン)
元売れっ子子役。現在はAV女優。仕事にプライドを持っていると強がるが心の底は劣等感でいっぱい。
思うように行かない生活の中でジェボクに出会い癒やしを感じ、そばにいてほしいと自分と家族の家に招き入れる。
AVから表の世界へ返り咲こうとオーディションを受けた帰りのテレビ局。玄関先で人気タレントの警護をしていた男に突き飛ばされ自尊心を傷つけられ、それを期に真剣に表舞台への復帰を目指す。
後にその男と再会。それがグクであり、自分が返り咲き一流になったら自分のボディーガードになってくれると約束してくれる。
幼い頃からシヨンは家族を養い守ってきた。男までも囲い貢いできた。グクは身の危険も守ってくれるだけではなく、メンタルまでも支え伸ばしてくれる。
見事にシヨンは返り咲き新聞の一面を大きく飾る。
暫く経ったある日、忙しく次の現場へと向かう。その後を慌ててグクがついていく。

●カン・グクヒョンビン
子供の頃、交通事故で両親を亡くし孤児になり教会の神父に育てられる。
喪失感がそうさせたのか自分の責任と感じたのか「守る」ということに異常な執着を持つようになり、大学も護衛を専攻。財閥系のホテル社長の秘書兼ボディーガードとして支える。(この社長も訳あり。財閥の妾の子のため愛情に薄い。人を信じることをしないが自分と同じ境遇のグクに執着する)
ある日、自分が社長車の運転を拒んだ車が爆発(社長の親族の仕業)、運転を代わってもらった上司が大きな怪我をして更に自責の念は深まる。
グクにとって誰かを守るということは自分自身を守ることでもあり、それによって心の傷を癒やしていたようにも伺える。
シヨンとの交友はやはりジュンアと同様「可哀想に見える」ということからはじまるが、グクが守らなくても成長していくジュンアと違い、シヨンは自分の助言が機動力となり大きく成長していくという点が異なる。
ラストは大きくは表現されてはいないが、これまで身を固めていたブラックスーツから、シヨンのプレゼントのキャスケット帽を被ったカジュアルな装いに変わったことからグクも幼少期から抱えてきた呪縛から開放されたような様子が伺える。

視聴ポイント

こういった角度で視れば割と最後まで挫折せず視られるんじゃ?というポイントを書いていきます。

■自分だけが不幸ではない

不幸なのはジュンアだけではない。グクは交通遺児。シヨンは毒親を持つ。
ジェボクの闇も実は深く、妹に何もできなかった無力さと罪悪感を抱えたまま未完な大人となっている。
4人が交わることで知らず知らずのうちに他者の気持ちを理解できるようになる。
最終回では、それぞれの不幸だけど一生懸命耐えて頑張った子供の頃の自分が目の前に出てきて慈しんであげるシーンが出てきます。

■親たちにも悲しいワケがある
ジュンアは、同じように貧困で娘を養子に出したジュボクの家の暮らしから、当時韓国が本当に貧しく子供を養子に出さざるを得なかった状況と、その後の家族たちが(この場合義父まで)いなくなった子供をずっと案じている様子を目の当たりにする。

シヨンの親も今は寄生しているがその昔はお金持ちだった。貧乏になったのはテレビ局に裏金を積んだり等々したためであり、やり方は間違っているがシヨンの知らない努力をしていた。

グクは両親の死後、教会の神父に育てられるのだが大学入学前に蒸発。その理由が「グクの父親が好きだった」というまさかの事実。

■やっぱり最後は格差社会
ジュンアはもらわれた家で愛情を注がれ、高等教育を受け医学生といった設定。
いくら精神を病んだといえども医師免許という保険があり、実際それを活用して新たなる人生をあゆんでいる。そして両親を失ったグクも大卒。シヨンの家はもともと良家。

学歴もなくおまけに足をひきずるようになったジェボク。整形外科医になるという夢を描くのはいいが、現実は甘くはない。


わたしの感想

①主旨がみえなさすぎる
放送年の2004年は「韓国海外養子50周年」。
それを踏まえての企画モノだったようなのですが、それよりもサブカル的な「ヤンデレ」「AV女優」など監督と脚本家が描きたいものが悪目立ちし、単なる青春群像劇化。
・・・海外養子問題どこいった?

②ひねりすぎ
養子先をアイルランドにしたのは、恐らく北アイルランド紛争と朝鮮問題を重ねたのだと思うのですが、「IRA」がなんなのか視聴者は理解していたのだろうか?
ドラマタイトルと話の流れがここまで合致しない作品もなかなか珍しい。

③こじらせすぎ
せっかく当時にしては珍しい独特な雰囲気で進行していたのに、いきなりジュンアとジェボクが兄妹かも?というまさかの韓国ドラマあるあるの古典「出生の秘密」!
これがなにか意味を成すのかと思えばそうでもなく、DNA鑑定をしたら母娘ではなかったというだけ。

④で、結局なにがいいたいワケ?
あまりにもまとまりのない作品(海外養子テーマ作として)なので監督がどんな考えで作ったのか調べてみました。
色々探したところ、mixiのコミュニティでこんな書き込みがありました。

ドラマ「アイルランド」は”生”に向かうドラマ。誰かと誰かが結ばれる物語ではないので、ラストではジュンアを基準に見せた4種類のアイランド(孤島)を見せました。4人は一人の人間の異なる自我の側面でもあり、ジュボクは”聖人”シヨンは”欲望”グクは”保守性”を表します。ジュンアは自分の存在を悩んでいましたが、結局自分の中に宇宙があることに気が付き、やがて子供を産んで暮らしたでしょう。ラストが示唆するところを見れば、グクとシヨンは結ばれたかも知れません。
宇宙というと偉大な存在に思えますが、宇宙と塵とは同じ存在です。このような人間に対する認識が、作家と僕の共通項だったのです。 
<キム・ジンマン監督のインタビュー>より抜粋

※この文章は日本の雑誌に載ったものの抜粋のようです。監督インタビューの全文書き起こしを掲載しているブロガーさんもいらっしゃいますので興味のある人は探してみてください。キム・ジンマン監督+インタビュー+アイルランドで検索したらヒットすると思います。

インタビュー全文も読んでみたのですが、個人的に全然共感できませんでした。

やはり、前述の通り「海外養子50周年」にちなんでの企画作品だったようなのですが、本当に伝わってこない。

私が日本人だからというのもあるかもしれませんが、当時のお茶の間視聴率も高くなかったので、韓国民にもその辺の「コトの重大さ」(海外養子の弊害)がほとんど伝わってなかったというのが実情だと思います。

こういった離散家族作品は、視聴者の涙腺を煽るものばかりが多いのは事実なので、新しい切り口で挑んだ制作陣の意図もわからなくはないのですが、海外養子問題をサブカルっぽい切り口で斬っても意味がない。

ジュンアが「どうして私を捨てたの?」という問いに、ジェボクオンマは「貧乏だったから仕方がなかった」と答えるのですが、貧乏だから子供を捨てても仕方ないという方程式がどれくらい異常なことなのか、異常な方程式ではあるけれどもそうせざるを得なかったという当時の国の悲惨さこそが要なわけなので、そこがハッキリしていないから、この4人の若者たちがなぜいい歳になっても自分探ししているのか?という根本がまずもって伝わってこない。

当時の視聴者の中には、アイルランドという馴染みのない国名や、個性派イ・ナヨンの名前とチャチャっと見て「あ、これソッチ(個性派)系の作品?」と、海外養子テーマと気づかない人もいたんじゃないのかな?とも考えられます。

日本敗戦後、アメリカとソ連の代理戦後(朝鮮戦争)に巻き込まれ、ただでさえ散り散りバラバラになっていた民族が更にバランバランになり、国で子供を面倒見きれす海外に送り出した子供がなんと20万人!

ちなみに20万人は、西東京市(田無+保谷)の人口と同じくらいです。

韓ドラでやたらと養子設定がでてくるのは実際にそういった事実があるわけで、それについては後日まとめたいと思います。


まとめ

・・・ということで、私の印象を無理やり結びつけて解析してみたのですが、ここまで視聴者に噛砕させないとならないというのはどうかと思いますし、書いてみたもののそんなに意味がなく

まさに、「で?」

といった感じです。

それだけ海外養子や離散家族問題はデリケートなもので、お洒落なフィルターをかけても無意味でこじれるだけ。

腐っても鯛。腐っても医者。
離婚してシングルマザーになったとしても理解あるイケメンの元夫は協力してくれる。
随分都合の良い夢見物語のストーリーだなと思いました。

もし医者じゃなければ高確率で同じ不幸を繰り返すだけです。

離散家族が再会後、自分がイメージしていた親や子供像とは違いトラブルになるケースは実際多くあったわけで、例えば、親と子の生活レベルが全く違い家族として招き入れることを拒むとか、家族認定したはいいが全然働かず金の無心ばかりされるとか。

この作品と同じ年に同じ養子モノの「ごめん、愛してる」も放送されているのですが、あの作品のように、どこまでいっても不幸は不幸でしかない。というような作り込みのほうがシンプルで残酷でピュアで胸を打たれる。

今から17年も前の作品なので、南北問題がここまでこじれるとは思っておらず、韓国の格差も将来もっと改善されると思い描いていたのかもしれませんが、実際今こういった状況なので、夢を持った4人の若者の前途はどうかと考えるとなかなか複雑である。

こう考えると、ヒョンビンのデビュー作ってかなり難しいテーマの作品ということになり、あのグクという人物が飄々と「守る」ことに執着していたのもかなり切ない(病んでいる)ととらえることができるかもしれません。


・・・以上となります。

ちょっと難しい話になってしまいましたが、海外養子とはなんぞや?ということが少しでもわかっていれば登場人物の気持ちに共感できるかもしれません。

お付き合いいただきありがとうございます。

グクのご両親、性能の良い日本車に乗ってれば事故死しなかったのかもしれませんよ!(毒)


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