先日「バッカスおばさん」の記事を見て、ある変化に気づきました。表記が「バッカス“おばさん”」と「バッカス“おばあさん”」が混在しているんです。
オバサンとお婆さんです。
韓国のネット記事を読んでいくと“아줌마(アジュンマ)”から“할머니(ハルモニ)”にシフトしているようです。それだけおばさんたちも高齢化してしまったということですね…。
ハッ!と気づくと「バッカスおばさん」20年分の関連記事をチェックしていました(笑)
せっかくなので、おばさんたちの誕生から現在までの20年間の様子の具体的推移を記事を元に、ぷんおの主観満々でまとめてみたいと思います。
※参考にしたデータは2001〜2021年の20年間のウェブで閲覧可能の記事となります。
- バッカスおばさんの定義
- バッカスおばさんの時代推移
- 調査を終えての感想と日本の「パパ活」問題
- バッカスおばさん目撃談!
- おばあさんにお金をたかられた思い出
- バッカスおばさんを訪ねて【韓国旅行2023年】
バッカスおばさんの定義
手提げバッグに滋養強壮ドリンク「バッカス」などの飲料水を入れて持ち歩き、高齢者を対象に売春行為を行う40代以上の女性を指す。装いは年齢の割には派手めで厚化粧。(のような表記が多い)
近年は何も持たないおばさんや代わりにバイアグラを勧めるおばさんも出没。
代表的な生息場所は若い女性なら商売をしない屋外。おじいさんの生息する鐘路(タプコル公園、宗廟公園などがある街)。その他、冠山や南山などのソウル各所、地方都市の公園までにもおばさんが増殖。
公園で交渉後、近隣のモーテルへというのがパターン。
バッカスおばさんの進化型として、登山客に飲み物を薦める「コーヒーおばさん」や、お喋りやデートに重きを置く「リスおばさん」「ふくろうおばさん」といった癒やし系が登場。業務内容は基本バッカスおばさんと同じ。
・・・といった内容が多く見受けられました。
バッカスおばさんの時代推移
戦後の売春街とバッカスおばさん登場(1970年代)
70年代に入りバッカスおばさんが「社稷(サジク)公園」(鐘路)に登場しはじめたとの記載記事がありましたが、詳細は不明です。
鐘路は王朝時代から栄える歴史ある商業街。タプコルをはじめ多くの公園(文化遺産)がある古い街です。
この辺(鐘路〜南大門)には巨大な私娼街(非合法)あったそうなのですが、60年代末に浄化閉鎖され、その跡(桶屋的建物含め)に貧民や日雇い労働者が勝手に住み着いてしまい、歴史文化と貧困が入り乱れた不思議な雰囲気が形成されていったようです。
こういった様子は、日本の戦後の上野や浅草の様子とよく似ていると思います。
というか、どこの国でも同じかと。
栄養ドリンク「バッカスD」(バッカスD - Wikipedia)の発売は、1963年。ちょうど韓国が高度経済成長の波に乗り始めた時です。
参考記事:韓国の疲労回復ドリンク“バッカス”、「国民ドリンクを超えて世界的ドリンクに」 | Joongang Ilbo | 中央日報
ソウルなどの大都会に稼ぎに訪れる多くの貧しい単身出稼ぎ労働者たちに、元気の源であるバッカスをきっかに広まった様々なコミュニケーション(?)が「バッカスおばさん」の誕生かと思われます。
日本で言うところの「飯炊き女」(飯炊き女とは - コトバンク)が、ご飯炊き専業じゃない裏の部分を指すのに近いかも?と個人的に感じました。
※画像はバッカスエフ。パッケージはリポビタンDと今もなお酷似のままのようです。
風俗産業大ブーム(1970〜1990年前半)
70年代から米軍関係(基地村含む)や日本人観光客相手(キーセン観光)の国家総出の外貨稼ぎの国営売春が盛んになります。
80年代に入り夜間外出禁止令も緩和され民主化に向かう波に乗り韓国人の一般男性向けの性風俗産業も増え始めます。
1988年にソウル五輪が開催され韓国経済は絶頂を迎えます。
韓国人一般男性向けの風俗店というのは80年代に入ってようやく増え始めたようで、それまでは水商売のホステスさんが娼婦を兼ねていたり、床屋や喫茶店(チケットタバン=チケット茶房 - Wikipedia)がサービスの延長線に売春システムを組み込んでいたそうです。
とはいえ、日本に比べそういったお店は少ないイメージ。いったい韓国の男性陣は男性陣はどう暮らしているのか疑問でもあります。
IMF通貨危機時代(1997〜2007年)
「バッカスおばさん」と固有名称で呼ばれニュースを賑わすようになったのは90年代からのようです。
目立つ活動の場は「南山」エリア。
一般的には、“タクシー運転手”目当ての売春がはじまり”との記載が多いですが、走行中の車両や停車中の一般ドライバー、南山を訪れる一般客(車ナシ)もターゲットであったとのこと。
周囲にモーテルがないので、車中,暗がり,路地,トイレ,建物の階段など場所を移動ぜず短時間で業務(?)を遂行できる身近な場所…というのが公園系のおばさんたちと大きく異なるポイント。
公園系、南山系の他に、高速道路のパーキングエリアのトラックやバス運転手ターゲットの「コーヒーおばさん」も出現。(後述の登山客相手のコーヒーおばさんとは異なる)
その他、肉体労働者が多く集まる現場系を商売の場所。
おばさんの年齢は40代〜60代(今ほど高齢な感じではない)。未亡人,離婚者,シングルマザーなどの娼街では稼げない高齢者や社会的弱者が中心。
1997年の通貨危機による景気下降と2004年の法改(性売買特別法)への動きが風俗街の外に女性を集めることになってしまい、文化遺産のある市民公園がおばさんとおじいさんの売春の巣窟となるとの住民反発運動が勃発。
その高齢売春システムのニュースを知り公園に稼ぎにくる一般女性と、買春を目当てにやってくる高齢男性が更に急増していったとのことです。
韓国通貨危機(2008〜2009年)
「タプコル公園」と「宗廟公園」の二強時代。
生活困窮高齢女性と孤独な高齢男性の需要と供給がマッチし、おばさんとおじいさんが更に増え公園は年寄でカオス状態。
警察の取り締まりも更に目立ちあからさまなおばさんは減ったように見える(見えるだけ)。
公園で話を成立させ、周囲にバレないように互いに距離をとりながら近隣のモーテルへGO!となります。
交渉時も、売春料金(花代)を露骨に提示するのではなく、バッカス◯◯円の他に、餅(トック)△△円などの異なった品目を提示し、お触りのみ,疑似性行為,本番など区別している話もありました。
ちなみにこれは、南山系おばさんや高速道路で活躍する「コーヒーおばさん」が多く使っている価格提示のようです。車中とか野外でのサービス業務なので、区分けして短時間で人数稼ぎたいおばさんとっては非常に納得のシステムかと思います。
バッカスおばさんの存在を世界が報道(2014年〜)
●国内ニュースで大々的に問題化(2015年)
●シンガポールのテレビ局(2017年)
●宮根さんも報じる(2018年)
コロナより貧困が怖い!(2021年)
●コロナ禍でおばさんの生活がますます苦しくなる
性病やコロナ感染より「お金」。
前述の「リスおばさん」や「ふくろうおばさん」とお付き合いするおじいさんは、おばさんとの待ち合わせの際に、近くの店で(鍾路3街は貴金属街でアクセサリー屋さんが沢山ある)ブローチなんかのプレゼントを準備したり、おばさんたちもおめかしをして2人で食事やデートのみを楽しむこともあるようなのですが、この今のタプコル公園に集うおじいさんとおばあさんの関係性はなんといって良いのやら、、、
こうして調べていたら気づかない間に“オバサン”だった「バッカスおばさん」が“お婆さん”になって「バッカスおばあさん」となってました。
調査を終えての感想と日本の「パパ活」問題
※2022年5月24日更新
この記事を書いたのは、21年8月末でコロナ禍真っ只中で韓国を含め、世界で高齢者の貧困がクローズアップされた時期でした。
この頃、日本でも「おにぎりおばさん」「100円おばさん」など、高齢者の物乞い的な話や、貧困女子の売春の記事(参考:出会いは「売春婦」と「買春客」という関係で…池袋駅西口で体を売る女性(39)が明かす“街娼の恋愛事情” | 文春オンライン)などが取り上げられ、「パパ活」の意味合いも今のそれとはまた違ったマイルドな感じでした。(参考:パパ活とは何? わかりやすく解説 Weblio辞書)
このブログを読んでくださる方々の多くは、韓国の売春の多さへの興味(参考:大韓民国における売買春 - Wikipedia )からかと思うのですが、お隣の国のそれに「パパ活」を重ねて見てください。
下記記事は、2020年の「パパ活」について書かれた記事です。
これを読んでいくと、バッカスを持って公園に立たねばならなかった女性の切実さの想像とさして変わらぬ気分になってきます。
いろんな公園におばさんが増殖したようにパパ活アプリも乱立。南山のタクシー運転手に積極的にバッカスを売るように明け透けな感じになり、バッカスおばさんとお婆さんの混在のようにパパ活の他に、昨今ママ活なるものも増殖している。
まるで一緒。
皆さん、隣の国を憂いてる場合ではありませんよ。
バッカスおばさん目撃談!
確か2010年あたりだったと思います。
何かのキッカケで「バッカスおばさん」の存在を知り、韓国旅行で「宗廟」へ訪れるというよりかは、おばさん達がどうやって活動しているか観察しに行きました。
まず驚いたのが、外大門から入ると次の入り口までのだだっ広いコンクリート広場一面に「碁盤」が置かれ、おじさんとおじいさんがすし詰めで碁を打っているのです。
この画像の木の部分が道路沿いとなります。現在は改装されているようです。
宗廟市民公園|仁寺洞・鍾路(ソウル)の観光スポット|韓国旅行「コネスト」
肝心のおばさんたちは、おじさんたちが碁を打っている傍ではなく、木陰のベンチ付近。なにやらおじさんたちと話しているのですが、違和感しかないのです!
場にふさわしくないおばさんの派手な装いが!!!
韓国のおばさんは往々にして派手なのですが、バッカスおばさんたちはひと昔前の派手さで化粧も濃い。遠目からもわかるくらいに。
そしてやはりバッカスを片手にもっており、それを飲みながら話すおじさんもいました。
その時居たおじさんたちは小綺麗で、おばさんたちも一見は45〜60代の若作りと言った感じで、現在報じられているような孤独や貧困さは全く感じられず、どちらかというと、“高齢男女のちょっと危険な恋愛の駆け引きの場”といった感じでした。
この辺が時代の移り変わりの象徴かと思われます。
個人的にはおばさんより、囲碁をするおじさんの数が衝撃!!!
今も鮮明に覚えています。
現在のバッカスおばさんとおじいさんの生態はわかりませんが、貧困や孤独の中に少しでも楽しいことがあることを祈ります。
おばあさんにお金をたかられた思い出
ひと昔前の韓国では、合法違法含めた露天商(地下鉄車内構内での販売含む)がたくさん存在しました。
それらが存在し、黙認している理由の根底には、貧しさが存在します。(過去記事:なぜ 韓国には「屋台」が多いのか?【韓国文化考察】 - 日韓アルダ)
・・・2003年の旅行の際の思い出。
思いのほか綺麗に整備された街並みに驚きながら街を歩いていた時、お婆さんに声を掛けられた。
「お金を恵んでください」と、流暢な日本語で。
そのショックたるやらなんといって良いのやら。
〜こうしてバッカスおばさんの記事を書きながらハッとした。
お婆さんにお金をたかられた場所は、まさにバッカスおばさんのメッカ、タプコル公園の隣の仁寺洞でした。
そのお婆さんは、地味な服装でしたがどことなく品があり、そういう女性がそうせざるを得なかった背景を考えると胸が痛くなりました。
以上となります。
超長文、お付き合いいただきありがとうございました。
バッカスおばさんを訪ねて【韓国旅行2023年】
この記事はコロナ禍中(2021年)に書いたものです。
海外旅行できるようになったので実際におばさんたちのいるエリア行ってまとめ書きました。
ホストに貢ぐために立ちんぼする女の子のほうがヤバいと改めて思いました。私がこうしてまとめ記事書いているように、トー横や大久保公園の立ちんぼ女子、ブログネタにされていると思います。
<主要参考記事>
週刊東亜 https://weekly.donga.com/List/3/all/11/62065/1 https://weekly.donga.com/List/3/all/11/62065/1
中央日報 https://www.joongang.co.kr/article/4054562#home
朝鮮日報 https://www.chosun.com/site/data/html_dir/2001/03/26/2001032670269.html
ウェルフェアニュース https://www.welfarenews.net/news/articleView.html?idxno=15654
※その他主要新聞、新聞社系週刊誌等ニュースサイト。リンク切れ発生しましたらお許しください。